#7 夜の歌5

Song of Night, book5 人間は宇宙に生かされている

多くの現代人は、どこの国の人々も自分を頼り

自分だけを信じていけば何とか道を切り拓いて

快適な人生を獲得できると思っているかもしれません

けれども、そのことに固執している人は

全体の調和の中に生かされている自分を見出す人に比べて

夜の嵐のなかで苦痛はより大きいことでしょう

自我と言う壁を打ち破るために

現代人は恐ろしいほどの犠牲を払わなければならないでしょう

人間が、自由意志をもって

自分の力でこの地上をどうにでも変え

自分たちの運命を選択し、変えていけると堅く信じつづけるかぎり

人々はさまざまにあがき、戦い続け

そして、それらのことが結局

徒労だったと知ることになるでしょう

これは、人間が努力することは

無意味だと言っているのでは決してないのです

けれども、その努力は

宇宙の調和のなかで自分が生かされていると感じ取り

その役割にそって充分にもって生れたエネルギーを使っていく

ように努力すべきなのです

それを思い違いして自分の力だけに頼るときに

自分の壁はますます厚くなって

その人を縛り

自分の作った壁から脱出することができずに

苦しみ続けることになるのです

現代における狂信というのは

昔、多くの人々がしたような呪いとかまじないとか

そういう形の狂信ではありません

個々の人間が自分の力を過信して

自分だけを頼りに生きようとあくまで頑張りつづけることが

現代における最大の狂信なのです

人間は一人一人バラバラに生きているのではなく

全体の調和のなかで大きな一つの霊を形づくって生きているわけですから

そのなかでの働きに徹して努力し続ければいいのです

そう思えば、いくら時代が暗くても

安心して前に進んでいけるのに

それを信じることができなくて小さな自分の力に頼ろうとするから

物を奪い合ったり

だましあったり

傷つけあったり

人間がお互いに全く信じられないということになるのです

自己をたのむという狂信は

人間と人間の間に恐るべき不信を作り出し

その不信が全体の社会を驚くほど暗くしてしまうのです

たとえば隣りの人を愛し信じることができれば

社会を明るくすることができますし

隣りの人を愛し信ずることによって

自分のなかに愛と信頼があることに気づくことができます

そのことによって

人間は自分自身が宇宙全体によって信頼され

愛されているのだということに気づくことができるのです

ところが、多くの現代人は

小さな自分と言うものだけを信じようとするので

家族や隣りの人さえも信じられないし

信じられなければほんとうに愛することもできないし

そうなれば自分自身をもほんとうに信じることも愛することもできません

もちろん宇宙全体から愛され

信頼されているということを信じることもできないのです

それが現代人の間に蔓延(まんえん)している狂信というか

まちがった思想であり、その思想が

人間への不信

自分への不信

宇宙全体への不信を作り出しているのです

地上に夜の嵐が吹き荒れるときに

あらゆる国の、あらゆる人々は

自分の心にそうした不信を発見し

誰もが死と隣り合わせに暮らさなければならないような状況の中で

そういう不信のなかで

生命を脅かされて暮らすことの苦痛に悩むことでしょう

そして

その苦しみゆえに

人々は今まで自分の力を過信してきた

自分の力をたのむという心を捨て去ることができるようになるでしょう

小さな自分の力などではどうしようもないことが

この世にあると感じられるようになり

自分勝手な努力によって自分の生命を延ばしたり

いわゆる幸せを得たりすることなど決してできないのだ

ということに気づくようになるでしょう

そのときはじめて

自分というものを過信する現代人の狂信を離れて

全宇宙のなかで生かされている自分を発見し

安心することができるようになるでしょう

それに気づけば

死もまた恐ろしいものではないのです

肉体を持って地上に生れてきた人が

個としての肉体を超えて

また、個としての自我を超えて

ほんとうに全てを捨てきって全体のなかに生きる自分を発見することは

やさしいことではないのです

それは非常にむずかしいことだからこそ

非常に多くの苦しい試練が用意されているのです

それでも

その試練を乗り越えて

宇宙そのものとして生きる人びとが

数多くなったとき

地球に朝が訪れるのです

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