We, in Africa
アフリカはサバンナのど真ん中。小さな湖に今、夕陽が沈んでいく。赤く染まった空に、視界の左手から黒い大きな動物がゆっくりと現れる。象だ。象の背には人が乗り、雄象、雌象、子象、つぎつぎと10数頭姿を見せ、湖の向こう岸を一列になって歩いてくる。
あまりの美しさに息を呑み、私は夢中でシャッターを切った。なぜか、この一瞬、私は魂の奥底から深く深く感動し、「ああ、生きてる限り毎年、アフリカに来たい!」と思った。そこには70年の人生で見た、最高の調和感、溶けてしまいそうな安らぎがあった。自然と動物と人間が一体となってかもし出す穏やかさ、暖かさが私を包み込み、放心させてしまったのだ。
南アフリカのサバンナでは、あらゆる物が自己の存在を鮮烈に主張し、かつ、そのすべてが溶け合って調和している。
ヒョウが3頭、高い樹の上にいる。サファリジープで野生動物を探していたときのことだ。レンジャーが「手前の樹の上にいるのが、母ヒョウと娘。少し先の樹の上が息子ヒョウだ」と教えてくれた。ふと、木の根元を見ると、ヒョウより大きなハイエナ夫婦が上を見上げ、じっと3頭のヒョウを見張っている。
「昨日、母ヒョウがハイエナの子を食べてしまったので、ハイエナ夫婦が子供を返せ!と迫っているのだ」とレンジャー。
「復讐でヒョウの子を食べようと狙っているの?」と私が聞くと、「いや、自分の子が死んでもういないとわかれば、ハイエナはあきらめるよ」
と、そのとき、息子ヒョウがするすると高い樹に身を巻き付けながら降りてきた。ハイエナはダッシュ。息子は慌てて別の樹に駆け登った。その隙に、母ヒョウが逃げ、ハイエナは後を追った……。野生動物の世界でも、こんなつきあいがあるんだなぁ。
夕暮れ時、低い木に囲まれた草地で、ライオン夫婦が交尾をしている。くっついては離れ、またくっついて堂々と続けている。この日は遠景ではあったが、キリンの交尾も見た。
サバンナの動物達は、草食のインパラやクドゥ達も、実にのびのびと、楽し気に暮らしている。「そりゃ、食べられちゃうこともあるさ。でも、今は草はおいしいし、跳ねたり、飛んだり、生きることを楽しんでいるのさ」とでも言いたげだ。
アフリカの魅力は、人間も動物も「死ぬことも生きてることのうち!大自然の調和のうちに、私もちゃんと生かされているのだから、何があっても安心して生きていていいのよね」と感じているらしいことだ。ここでは、すべてを受け入れて、安心して、穏やかに時は流れていく。
昨年のワールドカップの時も、南アフリカは、超危険な国としか報道されなかったけれど(確かに大都会には危険な地域はあるけど)、田舎やサバンナでは、住む人々の心も温かく、包容力があって、生活は実に楽し気。アフリカに来れば、東京暮らしのストレスは深いところから癒され、地球という星に生まれた喜びを実感できるのだ。かくして、私たち一家4人は(私たち夫婦と息子夫婦)毎年アフリカ通いを続け、今年9月には5回目の旅を楽しんできた。来年は出来たらマダガスカルにも足をのばしたい。
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