#26 1984年4月13日
栄道老師
春のビーチャー湖は、鳥鳴き、花々の芽が吹き出していることでしょう。いかがお過しでいらっしゃいますか。
いいことがありました。うれしくって、心に花吹雪舞うようです。薄紅の花びらの、とめどもない乱舞です。
一昨日、ちょうど、中川宋淵老師のお葬式の朝でした。去年の冬、凧を見て以来の坐禅体験がありました。なんといったらいいのか、それは、すばらしいよみがえり体験でした。
凧を見てから、わかった、わかったという感じで、また、こんなすばらしいよみがえり体験があるとは、思ってもみませんでした。これで、「禅」へのこだわりが、ついにとれたように思います。
人はただ、因縁をありのままに受け入れて生きればいいのですね。ただ、一瞬一瞬を空の心で生きればいいんですね。
4月11日!宋淵老師とも、何と深いご縁であったことでしょう。陵禅会で、老師がえんえんと、花吹雪の乱舞のような禅体験を語ってくださった夜を思い出します。薄闇の中に、老師のお顔が、月影のようにぽっかりと浮んでいる‥‥‥。いつまでも、あのお顔は消えません。
鈴木宋忠老師にも、お世話になりました。ある時、行につきる、といわれた一言が、中国旅行以降のわたしを支えてくれました。ほんとに、「行につきる」の一言に導かれて、この数年を生きてきました。
お葬式の帰り道。三島で、宋淵老師の十句を拝見しました。
不二見えて あの世この世の若菜摘む
この句を読んだとき、ああ、今朝、わたしにも不二山を見せてくださったんだな、と思いました。
これから、若菜摘みといっても、摘むものは何もないんですね!
なんだか、この四年間の緊張がするすると溶けていくようです。
「禅」を求めての心の旅は、すごい旅でした。小さな我を脱却して、宇宙へ回帰してしまう旅。宇宙へ回帰して、宇宙のいのちに生きる旅。
今日は、何という心ゆたかな日なのでしょう。
何というおだやかな、歓びに満ちた日なのでしょう。
すべてが晴れやかで、輝きに満ちています。未来への思いが、こんこんと溢れてきます。身心に力が満ち満ちているのです。
ありがとうございました!
このお便りも、お花見の花びら。どうか、いい春をお過しになりますように。
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